
結論から:インドネシア顧客のCACは、初回購入の粗利ではなく90日以内の再購入率で回収が決まります。広告・会話・プラットフォーム・人件費の4項目を合算して1件あたりの原価を出し、初回応答3分以内と購買段階別の配信で2回目を設計してください。LTVがCACの3倍を下回るなら、広告を増やす前に運用を直すのが順番です。

越境ECの収益性は、広告のクリック単価ではなく「1人の顧客から何回買ってもらえるか」で決まります。インドネシア向けの販売では、その再購入の回路がWhatsAppの会話の中にあります。
ところが現場では、CAC(顧客獲得コスト)とLTV(顧客生涯価値)が別々の表で管理されています。広告担当はCACだけ、CS担当は返信数だけを見る。この分断が、赤字の広告を止められない原因になります。
| 指標 | 計算方法 | 参考レンジ | 危険信号 |
|---|---|---|---|
| CAC | 広告費+会話コスト+固定費 ÷ 新規成約数 | 初回粗利の50〜80%以内 | 初回粗利を超える |
| 会話→成約率 | 成約数 ÷ 実会話数 | 5〜15% | 3%未満が3か月続く |
| 初回応答時間 | 顧客の送信から最初の返信まで | 3分以内 | 30分超が半数を占める |
| 90日再購入率 | 90日以内の再購入者 ÷ 初回購入者 | 20〜35% | 10%未満 |
| LTV/CAC | LTV ÷ CAC | 3倍以上 | 1.5倍未満 |
| 顧客あたり粗利 | 売上 − 原価 − 送料 − 決済手数料 | 売上の25〜40% | 固定費を割り込む |

1件の問い合わせの原価は4項目で割る
CACを「広告費 ÷ 成約数」だけで計算すると過小に出ます。インドネシア向けでは、クリックから再購入までに4つの費用が発生します。
- 広告クリック:クリック単価 × クリック数。問い合わせ到達分だけを割り戻します
- 会話コスト:WhatsApp APIの従量課金とテンプレート課金。インドネシア向けは1会話あたり数円から数十円が目安です
- プラットフォーム費:月額、決済手数料、代金引換(COD)の未受取分、送料補助
- 人件費とAI費用:オペレーターの対応時間 × 時給、AIチャットボットの従量費
4項目を合算し、成約数で割ったものが実際のCACです。代金引換の未受取は、戻るたびに送料が二重に消えます。返品や返金の条件設計は越境ECの返品・返金マニュアルで整理しています。
月300件の試算例(円とルピア)
月300件、成約率10%(30件)を前提に並べます。為替は1円≒100〜110ルピアで概算します。単価は商材で変わるため自社の数字に置き換えてください。
- 広告費:12万円(約1,260万ルピア)
- 会話コスト:1.5万円(約160万ルピア)
- プラットフォーム・決済・送料補助:3万円(約320万ルピア)
- 人件費+AI費用:9万円(約950万ルピア)
- 合計:25.5万円(約2,700万ルピア)
- CAC:25.5万円 ÷ 30件 = 8,500円(約89万ルピア)
初回購入の粗利が9,000円なら、1回目はほぼ損益分岐点です。2回目の購入でようやく利益が乗ります。つまり広告を増やす前に、90日以内の再購入率を上げる方が投資効率は高くなります。
逆に成約率が5%に落ちると、CACは1万7,000円まで跳ね上がります。会話の質が成約率を動かす構造はインドネシア向けプロモーションの記事で扱っています。
東南アジアのCAC構造が欧米と違う理由
欧米の越境ECは検索広告とメールが中心で、購買が1つのチャネルで完結しやすい構造です。東南アジアはそうではありません。
- チャネルが分散している:Instagram、TikTok、Shopee、WhatsAppを行き来し、検索一本ではありません
- 代金引換の比率が高い:未受取が発生し、その分がCACに上乗せされます
- 会話の中で成約する:サイズ・在庫・到着日を確認してから買うため、会話の質が成約率に直結します
- 決済手段が分散している:銀行振込、電子マネー、QRコード決済が併存します
DataReportalの国別レポートでも、インドネシアはSNS利用時間が長く、複数プラットフォームの併用が当たり前です。だからこそ「どの広告から来たか」を会話の記録と結びつけないと、CACは正確に出せません。
LTVを上げる3つの運用
再購入は連絡のタイミングで作ります。効果が出やすい順に3つ挙げます。
1つ目は初回応答を3分以内にすることです。WhatsAppは同時に複数の会話が届くため、受信トレイの担当割り当てを決め、AIが一次返信を出し、複雑な相談だけ有人に渡します。3分を超えると成約率は目に見えて落ちます。
2つ目は購買段階別の配信です。購入直後のお礼と使い方、7日後のレビュー依頼、30日後の関連商品、90日後の消耗品リマインド。文面はテンプレート化し、顧客の言語で出し分けます。
3つ目は決済リンクと代引き確認です。会話の中で「今すぐ買えます」と決済リンクを渡し、代引き注文には受取確認を1通入れて未受取を減らします(機能一覧)。

毎週見るKPIは4つで足りる
指標は4つに絞り、目標と打ち手まで決めてください。
| KPI | 目標 | 頻度 | 改善の打ち手 |
|---|---|---|---|
| 初回応答時間 | 3分以内 | 日次 | 担当割り当て、AI一次応答 |
| 会話→成約率 | 8〜15% | 週次 | 商品情報の型、決済リンク |
| 90日再購入率 | 20〜35% | 月次 | 段階別配信、フォロー文面 |
| 顧客あたり粗利 | 売上の25〜40% | 月次 | 送料・返品・広告配分の見直し |
インドネシア市場での導入事例
インドネシアのF&B企業HolyWingsは、WhatsAppを起点に対応を再設計しました。クライアント報告値では購入への転換率6〜10%、平均応答3分未満、ファネル可視化90%超です。日本の事例ではありませんが、会話の速度と可視化が数字を動かす目安になります。詳細はHolyWingsの導入事例へ。
インドネシア顧客の窓口をWhatsAppに寄せるなら、Cekat.aiは公式APIの共有受信トレイ、AI一次応答、決済リンク、分析を同じ画面で提供します。料金と含まれる機能は料金プランで確認できます。
CACは何件くらいのデータがあれば計算できますか?
月100件程度あれば傾向が見えます。少ない場合は3か月分を合算し、成約率と応答時間だけを先に追ってください。
会話コストはどこまで細かく分けるべきですか?
国別とテンプレート別の2軸で十分です。インドネシア向けは単価が低いため、人件費の方が大きく動きます。
90日再購入率の目安はありますか?
消耗品は20〜35%が現実的な帯です。耐久財は10〜20%でも、粗利が高ければ成立します。
LTV/CACはどのくらい必要ですか?
3倍が実務的な最低線です。2倍を下回る状態で広告を増やすと、現金が先に尽きます。
AIを入れるとCACは下がりますか?
応答時間の短縮と定型対応の自動化で人件費が下がり、CACの3割前後を圧縮できる例があります。ただし会話の質が落ちれば成約率も下がります。
まず何から手をつけるべきですか?
初回応答3分以内です。原価の内訳を整えるより先に、これを満たすと成約率が動きます。
広告費・会話コスト・成約数・再購入数を1枚の表にまとめ、初回応答3分以内を守り、90日以内のフォローを型にする。CACの回収は、広告の予算調整ではなく運用の問題です。料金の詳細は料金プランをご覧ください。


