
結論から:AIから有人への引き継ぎが下手だと、顧客は同じ説明を三度繰り返します。決めるべきは3つだけです。必ず渡す条件、渡す文脈、返すまでの時間。この3つが決まっていれば、担当が変わっても会話は途切れません。Cekat.aiでは有人の退勤後はAIが受け、翌朝は会話の続きから読めます。

AIチャットの導入でよく起きる失敗は、AIの精度ではなく引き継ぎで起きます。AIが答えられない質問を担当に渡しても、担当は何を聞かれたか分からず、顧客は最初から説明し直す。これが2回続くと、顧客は「この窓口は話が通じない」と判断します。
引き継ぎは、担当者の性格や頑張りではなく設計で決まります。渡す条件、渡すべき文脈、AI稼働時間、SLAの3段階、よくある失敗の順に見ていきます。
まずは引き継ぎ条件の表から
「AIで対応できる範囲」より先に、「必ず人に渡す条件」を決めてください。境界を先に固めるほうが、AIの設定は短く済みます。
| 渡す条件 | 誰が受けるか | 返すまでの目安 |
|---|---|---|
| 顧客が「担当者と話したい」と言った | その時点の当番 | 3分以内 |
| 見積もり・価格交渉・契約条件 | 営業担当 | 営業時間内60分以内 |
| 返金・補償・苦情 | CS責任者 | 30分以内 |
| 本人確認が必要な手続き | 運用担当 | 当日中 |
| AIが2回続けて答えられなかった | 当番へ自動通知 | 15分以内 |

表の3列目まで書くのが重要です。「渡す」とだけ決めても、誰も受けないまま時間が過ぎます。返すまでの時間を決めておくと、当番表とアラートの設計に自然とつながります。
渡すべき文脈:会話全文・顧客カルテ・すでに約束したこと
引き継ぎで最も多い不満が「また一から説明させられた」です。これを防ぐには、次の3つを必ず一緒に渡します。
- 会話全文と要約:何を聞かれ、AIが何を答えたか。要約は30秒で読める長さに
- 顧客カルテ:過去の購入、問い合わせ履歴、利用中のプラン
- すでに約束したこと:AIや前の担当が「折り返します」と口にした内容
3つ目が抜けると事故になります。AIが「本日中に連絡します」と答えたのに、その約束が担当に伝わっていない。顧客は待ち、翌日には苦情になります。約束は会話ログに埋めず、カードの目立つ位置に出してください。

AI稼働時間の設計:在席は有人優先、退勤後はAI、週末と祝日
AIは24時間動かせますが、24時間AIに任せるのが正解とは限りません。時間帯で役割を分けます。
営業時間内は有人を優先します。担当が対応できる時間にAIが長く話すと、顧客は「人に聞きたい」という希望を叶えられません。AIは一次応答と要件の聞き取りまでに絞り、要件が揃った時点で担当に渡します。
退勤後はAIが受けます。即答できる質問はAIが処理し、複雑な相談は「翌営業日の朝に担当から連絡します」と伝えて記録します。夜間に届いた分を翌朝まとめて処理するだけで、取りこぼしは大きく減ります。週末と祝日も、在庫や納期の確認で済むものはその場で完了させ、判断が必要なものだけを週明けに回します。稼働時間の設定はWhatsApp APIの料金解説でも触れています。
双方向の引き継ぎ:有人の退勤後にAIが上文を読めるか
引き継ぎはAIから人へだけでなく、人からAIへも必要です。夕方に担当が対応していた会話に、夜になって顧客が追加の質問を送る。このときAIがそれまでのやり取りを読めなければ、顧客は同じ説明をやり直します。
確認すべきは、同じ受信トレイに会話が残り、AIとチームが同じ文脈を見ているかです。チャネルごとにツールが分かれていると、この前提が崩れます。複数チャネルを1つの受信トレイに寄せる考え方はWhatsApp Business APIのBSP比較が参考になります。
SLA3段階の書き方
SLAは、守れる段階に分けて書いてください。最初から24時間365日を掲げると、必ず破られ、誰も見なくなります。
- 第1段階(公開してよい最低線):営業時間内の初回応答60分以内。夜間と休日は翌営業日の午前中
- 第2段階(半年後の目標):営業時間内30分以内、夜間はAIが即答、休日も当日中
- 第3段階(成熟後の姿):有人24時間365日。ただし当番を3交代で組める体制が前提
段階ごとに、誰が受け、どのアラートが鳴るかまで書きます。担当が決まっていないSLAは、達成率も測れません。どの段階にいるかを四半期ごとに見直してください。
よくある失敗3つ
1つ目は、渡したのに誰も拾わないことです。担当は別の会話を追っていて、渡されたことに気づきません。渡した瞬間に当番へ通知を出し、受け取った人が「対応中」に変えるまでアラートを鳴らし続けてください。
2つ目は、文脈がないことです。「問い合わせがありました」の一言だけでは、担当は最初から聞き直します。前の節で挙げた3点をカードに必ず入れてください。
3つ目は、渡した後もAIが割り込むことです。担当が対応している会話にAIが自動応答を返すと、顧客は二重の返事を受け取り、混乱します。有人が担当を持った時点で、その会話からAIを外してください。この3つは、いずれも設定で防げます。
当番表とアラート
引き継ぎは、当番表がないと機能しません。平日の日中、夜間、週末の3枠に分け、それぞれ第一当番と第二当番を決めます。第一当番が15分反応しなければ、第二当番に自動で回す仕組みにすると、取りこぼしが減ります。
アラートは鳴らしすぎないことも大切です。全部の会話で鳴ると誰も反応しません。鳴らす条件は、SLAの期限が近いものと、顧客が不満を示したものの2つに絞ってください。
導入事例:Asuransi Simas Insurtech(インドネシア市場のクライアント)
インドネシアの保険会社Asuransi Simas Insurtechは、問い合わせ窓口を統合し、書類の読み取りと会話の記録を1か所にまとめました。クライアント報告値では応答が5倍速くなり、24時間365日の受付を実現しています。日本の事例ではありませんが、稼働時間と文脈の設計が体験を変える目安になります。詳細はAsuransi Simas Insurtechの導入事例へ。
ここまでの設計は、ツールが分かれていると維持できません。会話、顧客情報、当番、アラートが別々の画面にあると、どこかで必ず抜けます。Cekat.aiは、サイトチャット、WhatsApp、Instagram、Messenger、TikTok、メール、SMSを1つの受信トレイにまとめ、AIとチームが同じ会話を共有します。引き継ぎ条件と稼働時間の設定は機能一覧で確認できます。
AIはどこまで答えてよいですか
事実確認で答えられる範囲はAIに任せ、価格交渉、補償、契約、本人確認は必ず人に渡します。
引き継ぎの通知はどこに出しますか
受信トレイ内の担当アサインと、外部への通知の両方です。画面を見ていない時間帯があるためです。
夜間の問い合わせはどう扱いますか
即答できるものはAIが処理し、判断が必要なものは翌朝に一覧で渡します。一件ずつ起こす必要はありません。
SLAは何段階から始めますか
第1段階の1つからです。守れた実績ができてから、次の段階を目標として足します。
有人が対応中の会話にAIが割り込むのを防げますか
防げます。担当が会話を持つと同時にAIの自動応答を止め、担当が離れたら再びAIに戻します。
多言語の引き継ぎは可能ですか
可能です。AIが会話の要約を担当の言語で渡すため、言語の違う担当でも引き継げます。
当番表は何人から作れますか
3人いれば平日日中・夜間・週末の枠を回せます。2人なら夜間をAIに寄せ、翌朝処理にします。
引き継ぎの品質はどう測りますか
「顧客が同じ説明を繰り返した回数」と「引き継ぎ後の初回応答時間」で測ります。
引き継ぎの質は、AIの賢さではなく設計で決まります。必ず渡す条件を表にし、文脈3点をカードに載せ、返すまでの時間を決め、当番とアラートで支える。この順で整えると、顧客は同じ話を二度しなくなります。設計の進め方について相談したい場合はお問い合わせからご連絡ください。


